自己啓発本を焼き捨てろ カレー沢薫『負ける技術』
ポジティブ礼賛の流れを世の中に感じるようになって久しいですが、そんな中で颯爽と現れたるが、時を翔ける天使ことカレー沢薫である。
OL兼漫画家として粛々と活動を続けるカレー沢女史のコラム集『負ける技術』を読了したので読書感想文をしたためておきます。
まぎれもないカレー沢薫
「負ける技術」とはそもそも何か。念のために言っておきますが、本書には「負ける技術」としてのテクニックが満載、かと思いきやそういう類の書籍ではない。
じゃあ何か、と言われると「カレー沢だよ」としか言いようがないのであるが、それでは説明にならないトートロジーである。
『負ける技術』を端的に言えば、カレー沢薫が、圧倒的にネガティブで怨嗟のこもった日々をつづった素敵な文集だ。
生々しいネガティブさを放ちながらも、どことなくフレッシュ。彼女の漫画作品と同じように、ドライブ感のある文章を楽しめる。
すこし引用してみましょう。
#3より
最初の着信の時は出られなかったのだが、その後、それが講談社の番号と知るや否や、頭の中はカネのことでいっぱいになった。
正直すぎる。
だいたいが全部こういう調子なので、カレー沢薫に少しでも興味があれば買ってヨシの一冊であるといえます。
ちなみに僕はKindleで購入したので、外出時でもいつでも読める。
負ける技術とは
いちおう、負ける技術というタイトル(担当編集が考案したらしい)にも意味があると語られている。
いわく、希望を持った結果失望するよりも、基本ちょっと負け続けて生きていたほうが傷つかずに済む、という意味らしい。それが「負ける技術」だ。
まるでステンレスのように、「ちょっとだけサビているからこれ以上サビません」という姿勢。
すべての無思考ポジティブ系自己啓発本を燃やし、今すぐ僕たちは負ける技術を身に着けるべきなのだと直感した。
とステマしておく。
漫画も素晴らしいです
僕がはじめて読んだカレー沢薫作品は、『バイトのコーメイくん』でした。
酒屋からコンビニへ鞍替えした店長の劉備(牛)、バイトのコーメイらが繰り広げる、いつどこの世界が舞台なのかまるでわからないギャグ漫画となっている。ラストは何気にじわっとくる。
EDになった課長・起田総司を描いた直球下ネタ漫画『やわらかい。課長 起田総司』もトガっている。ちなみにカレー沢作品のキャラクターは、ほとんどこの手のセンスでネーミングされており、一度目にしたら忘れることができない。
そしてカレー沢作品の原点でもあり、私が最も好きなのが『クレムリン』である。
カレー沢女史はこの作品を引っ提げて新人賞に見事落選、その後なぜか連載が決定するというミラクルを起こした。その時点で凡百のギャグ漫画とは異質であることがはっきりと分かるのですが、この作品に関しては言語を用いて解説することがあまりに無意味なので、ぜひいちど目を通していただきたいものである。
(出典)
3匹全員同じ名前の猫「関羽」と、飼い主となった却津山春雄(通称キャッツ)らが過ごす、狂気に満ち溢れた日常を描いた作品である。
延々読み返している。
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