『漫勉』にあって『マンガノゲンバ』になかったもの
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『浦沢直樹の漫勉』。最近でもっとも面白いテレビ番組なんじゃないかと思います。これまでありそうでなかった、漫画ではなく漫画家そのものにフォーカスする番組。取り上げる漫画家も実にツボに入るチョイスをしていると思います。藤田和日郎とか、魂が震えた。
一方、同じNHKで放送されていた『マンガノゲンバ』という番組がありました。唐沢なをき先生へのやらせインタビューでも話題となった番組でございます。僕もたまに見ていたんですが、なんというか圧倒的に「そこじゃねーんだよなぁ」感のする番組だったと記憶しております。
漫勉とマンガノゲンバの差
端的に言ってしまえば、愛があったかどうかの差だと思うのです。漫勉には、漫画家への愛がこもっていると思うのです。MCも浦沢直樹ですし、制作サイドとしても半端なことはできないというプレッシャーがあるのでしょうか。番組の趣旨がはっきりしているのもとても好印象を受ける番組です。
対して、マンガノゲンバという番組は「いまこの漫画がアツい!」といった観点から、作品と作家を紹介するという番組でした。MC陣はほとんど漫画関係者ではなかったと記憶しております。どうも、「このマンガがすごい」と似たようなものを感じます。それテレビでやる必要あんのかなー、と毎回思うような感じでした。うまくは言えないのですが。
あと、マンガノゲンバが特に寒かった点として、漫画のセリフに声優さんが声をあてて紹介していた部分。それって、漫画に失礼なんじゃねーの、と思いながら見ていました。だって、音声がいらないようにセリフ書いてるんですから。ボイスがつくのはアニメで十分じゃねーかなぁと思うのです。漫画の原稿に、不要で浅薄な解釈を持ち込んだ結果があの番組構成だと思うのです。アニメーションって、はじめから音ありきで作品を解釈して作られるもんだから、それはボイスがついてしかるべきなんですが。漫画の原稿に声、というのはどうもお寒かった。
あとは、どう見ても作品読んでないよね、というアイドルのMCとか。オタクがそういうの一番嫌うのが、たぶんあの番組作ってた人はわかんなかったのだろう。
とにかく漫勉だ
とにかく。漫勉という番組が生まれた理由は、「漫画家の持つ技術や手元を、貴重な資料として残すため」というもの。これが読者がテレビに求めていたものだったのだよ、と僕は言いたいです。マンガノゲンバがやっていた作品紹介なんて、正直いまやブログやツイッターで十分なのです。漫勉という番組がやっていることは、ひとつの事件みたいなもんです。日本という国がここまで漫画文化を発展させておきながら、その作家個人個人にスポットが当たらなかったっていう歴史をひっくり返したわけですから。
個人的には、藤田先生の回でかかっていたBGMがゲリラレディオだったりと、もう何もかもが楽しかった。
作者本体がどうなっているのかを克明に取材したものは、圧倒的に読者の興味を惹きます。これが漫勉が面白い理由ですわね。作者の情報なんて、作者自身から発表していかない限りは見られなかったわけですから、そういう意味で漫勉が取材してくれるということは、「視聴者がテレビにやってほしかったこと」の一つの解答なわけです。拍手ですよ、NHK。マンガノゲンバという黒歴史があってこその経験値。
今後も継続的に放送してほしいものです。西村ツチカとかヤマシタトモコ回があれば8万回録画します。
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