王様達のヴァイキング8巻感想(ネタバレ含む)
『王様達のヴァイキング』こそが、今一番熱い漫画である。
『王様達のヴァイキング』とは?
このブログにて『王様達のヴァイキング』に触れるのはほぼ初めてだったと記憶しておりますので、軽い作品紹介から入ろうかと思います。
この漫画を端的に言えば、「IT」と「ハッカー」を題材にした作品です。サヴァンっぽい気質を持つため、周囲から迫害され高校を中退した天才ハッカー是枝一希が、ある日「エンジェル投資家」坂井大輔と出会う。是枝の才能に魅了された坂井は、是枝の持つ圧倒的な技術と、自らの持つ膨大な資金を使い、「世界征服」を標榜する。
そんな野心的な作品でございます。
世間一般で言われる、ウイルスやスパイウェアなんかを作ったりするハッカーのイメージを持って読むと、仰天させられる作品です。ITってここまで進歩してんの!? と、読み進める度に衝撃の連続。インターネットを題材にしたクライムサスペンスとして、そして人間ドラマとして一級品の出来ですし、何よりも物語のドライブ感が異常。荒っぽさを残した作画は、読者を選ぶ要素なのですが、それが魅力のひとつでもあります。絵はものすごく上手ですよ。
ちなみに作者のさだやす先生は、漫画家・さだやす圭先生のお子さんだそうです。親子そろって漫画家。
絵柄を見ると、さだやす先生の性別が気になるところですが、ネットだと判明していない様子。女性っぽさも感じる絵柄なんですよねぇ。
王様達のヴァイキング8巻の感想
というわけで、7月30日発売の『王様達のヴァイキング』8巻、諸事情ありましてようやく昨日読みました。7巻の終盤でボロ泣きしてしまった僕としては、今回も非常に楽しみながら読めました。今回から別エピソードへと突入。坂井大輔インサイダー取引疑惑篇です。
日本でインサイダーといえば、ホリエモンですね。当時ITバブルの寵児としてもてはやされたホリエモンの、突然の没落として騒がれました。まぁホリエモンは未だに出所後も現役バリバリで稼ぎまくっていますので、あの事件なんて屁でもないのでしょうけども。
ともかく、IT業界や投資という業種に対する世間のステレオタイプなイメージとして、インサイダーという言葉が与えた影響は計り知れないわけですね。作中で多大な影響を持つ坂井大輔にとっても、インサイダー取引疑惑が彼の信用に与えたダメージは多大。
そんな坂井を救うのが、「仲間」なのです。この漫画、ITとかプログラミングとかパスワードクラッキングとかATMにスパイウェア仕掛けるとか、モチーフはひたすらクールなのに対して、根っこがめちゃくちゃ泥臭い。奇しくも、ヴァイキング=海賊というワードが共通する、あの『ワンピース』に匹敵するぐらい、仲間という意識が強いのです。
7巻でも、ingressをモチーフにしたGPS連動型ゲームアプリが物語のキーとして登場しましたが、要はITがいかに発達しても、それを使うのは結局人間である、というテーマなんだと思います。このバランス感が非常に熱い。
坂井大輔という男
孤独にクラッキングを続けていた是枝一希を救い出した男・坂井大輔ですが、そのビッグマウスに代表されるような豪放磊落なキャラクターが魅力のひとつです。そんな坂井大輔に訪れる最大級のピンチが、『王様達のヴァイキング』8巻で描かれる主な内容です。
前述した「仲間」意識が顕著に出ているなーと思った部分は、坂井が依頼した弁護士の桐生先輩。坂井は彼のことを「信頼できる地元の先輩」として紹介。「地元の先輩」ですよ。投資家ってそういった人間関係はドライに考えてそうなイメージですが、坂井大輔という男の「人間に対する思い」のようなものが、そういった点からもにじみ出ているセリフだと思いました。
といった具合に、8巻は坂井大輔という男について掘り下げる意味をもった巻である、とも言えるわけですね。兄貴に加え父親、そして甥っ子と姪っ子までもが作中に初登場。甥っ子と姪っ子、かわいいですね。是枝と彼らの絡みなんかも面白く読めた点でした。
インサイダーの黒幕はヴァルキュリヤ。そして実行犯として使われたのは、坂井大輔にアイデアの非現実性を批判された起業家志望の大学生・中村貴でした。ともすれば同じ道を歩んだかもしれなかった、中村貴という男。彼が製作した盗聴アプリを坂井が削除するシーンは印象的です。ソフトウェアの開発やアイデアには人間の血が通うもの。しかし、フリックひとつでそれをインストールすることも、削除することもできるわけです。人間関係の儚さが詰まったシーンであると言えるでしょう。8巻を代表するひとコマであると言えます。
新章はブラック企業編なのか
そして息もつかせぬまま、新エピソードへと突入。テンポいいなぁ。
個人的には、桐生弁護士は登場タイミング的に黒幕っぽいなぁと思っていたのですが、どうやら違うみたいです。新エピソードの冒頭に、いきなり依頼を受ける桐生弁護士。会社の上司から暴行を受けた旦那について、弁護士に相談をもちかける奥様の姿が。痛々しいです。
旦那・天野さとるに暴行を加え一方的に解雇するなど、明らかなブラック企業として描かれるイグサフーズですが、そんなイグサフーズが桐生弁護士事務所のPCをハッキング。そこで是枝に依頼が舞い込むところで、8巻は終わり。良い引きしてます。
もう明らかに、ブラック企業問題に切り込む気が満々であろうエピソードの開幕。非常につづきが楽しみでございます。
まとめ
手の届かないところで、やはり手ぐすねを引いていたヴァルキュリヤ。そして妙に仲良さげになっているラスボス・ラフィンキャット。この二人の動向も気になるところです。やはり彼らが登場すると物語のテンションは上がります。特にラフィンキャットの大物感はとんでもないものがありますので、ぜひ今後も維持していってほしいなぁと思います。
ここまで読んじゃって、気になった方は1巻からどうぞ。
8巻、まだ読んでない方は早く読みましょう。
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