web漫画のコマ割りこそが漫画の最新型なのか?視線誘導のアレコレ
漫画のコマ割り、たのしいですよね。苦しいときもありますが、上手くいくと楽しいですよね。コマ割といえば、10年前までは見開き単位でコマを割るのが当然だったのですが、現在は事情が変わりつつあります。それはまさしく、web漫画的な、スマートフォンサイズに合わせた縦長のコマ割に他なりません。
っちゅーわけで、今回はweb漫画のコマ割あれこれを、視線誘導に絡めてお話していきたいぜ。
見開き単位のコマ割
はいドン。拙作『ゲルシュテンドルゴゴ族』からの見開きです。水色の線が、僕が意図している視線の流れです。別に、画面つくる時には矢印とかあんまり意識はしないんですが、まぁなんとなくこんな感じにしたいなーという目的で画面構成します。
見開き単位でコマを割りますと、大まかにいえば横長の長方形の右上から、左下へと視線がうつることを想定していきます。つまり、ふつーの漫画本と同じですね。ばっとページをめくったときに、右上から読んで、左下にいきますよね。そゆことです。
実際に本になる場合は、さらに左右のページの中央(ノド)は、本がとじこまれる部分なので物理的に見づらくなります。なので、ノドの部分にはなるべく重要な情報を入れないように心がけます。推理漫画で、めっちゃ重要な情報がノドの部分に隠されていた、みたいなメタ的な遊びをやりたい方はやってみるといいんじゃないでしょうか。本を引きちぎらないと真相が見えないストーリーとか。
というのはさておき、この見開き単位のコマ割ですが、現在のweb漫画においては「当たり前」のものではございません。むしろ、PCやタブレットなどの横長画面で、腰を据えて見る人用のコマ割であると言ってよいでしょう。みなさん、最近インターネットを見るデバイスは、PCだけではありませんね。そう、スマイリーホッカイロこと、スマホです。
web漫画で最近よくあるコマ割
あーらよっと!
こんな感じのコマ割です。シンプルぅ。内容に特に意味はないです。
こういった「縦スクロール型」のコマ割が最近とっても多いです。おそらく、Pixivなんかで漫画が発表されまくるようになってから、こういうコマ割が増えたのかなーと考えております。とにかく、インターネット上で漫画が発表できるようになり、原稿用紙や紙といった媒体から解放された漫画の姿がコレです。
かつて漫画が見開き単位でつくられていたのは、漫画を「本」という形態でつくるほかなかったからです。その他は、4コマのように縦長のレイアウトも存在しましたが、結局あれも新聞などの限られたスペースに配置されていました。その後4コマは2本で1ページ、または1本で1ページ、みたいなかたちで結局は従来の漫画本と同じ形態をとることになります。
一方web漫画はといいますと、紙面という制限がなくなったことで、より「余白」や「スクロールする楽しみ」といった遊び心を得たジャンルであるといえましょう。
石田スイ『THE PENISMAN』のこの話でも、余白とモノローグをスクロールさせる面白さを感じさせます(物語のかなりイイトコでネタバレ注意と、若干のグロ注意です)。
感覚としては、動画メディアに近いものがあります。アニメや映画といった動画メディアは、パソコンやテレビ、スマホといった固定された画面のなかを映像が動きますよね。上で紹介したweb漫画型のコマ割というのも同じで、スクロールという動作で時間をすすめることで、あとは画面のほぼ一点を眺めていればストーリーの進行が楽しめるようになっています。
web漫画のコマ割と今後
より動画メディアのようになっていくコマ割のなかで、もはや動画メディアとして発表している黒田サンセット氏の『薬術士』はマジで新しいスタイルなわけです。やっていることが超web漫画。
Google先輩も、webサイトの評価基準として「モバイルフレンドリー」を打ち出しました。これはどういうものかといいますと、スマートフォン対応していないレイアウトのサイトの評価は上げづらくなるよ、ってことです。うちのブログもスマホ対応するテンプレートを使わせていただいています。
漫画もそのうち、モバイルフレンドリーが当たり前になるのかもしれません。見開き単位でつくられる、リアル書籍型の漫画がなくなるということはないと思いますが、web漫画はweb漫画としてのスタイルが構築され、それを求められる可能性が大いにあります。
とにかく、コマ割は「見開き単位」でやってりゃOK、みたいな時代は終わりつつあるということですな。漫画の読まれ方が変わると同時に、漫画のかたちも変わっていくのでしょう。
でもやっぱり、普通の漫画は面白いよなぁ、と感じる『亜人ちゃんは語りたい』(2)が先日発売されました。余白の使い方といい、キャラの描き方といい、漫画としてのグルーヴ感が最高です。ぜひ。
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