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やっと映画『バクマン。』観てきたので感想(ネタバレ含む)

公開日: : 最終更新日:2016/01/16 映画について

web漫画家を標榜しはじめました。カルロス袴田です。

 

なんかやかんや気になっていた映画『バクマン』です。評価がやっと自分のなかで腑に落ちた感がありますので、メモがわりに感想を書きます。面白かったぞ!

 

(画像はこちらから)

 

漫画の映画じゃなくて、これは『努力・友情・勝利』の映画です。

『バクマン。』って一言でいえば「漫画家の漫画」です。いかにヒット作を出すか、とか漫画をロジカルに考えて漫画をやっていく漫画。いわばゼロ年代版、邪道を辞さない漫画道。

 

ということで、原作ではかなり「漫画連載における順位争い」を描く分量が多かったと思います。いわばデスノート的な知能戦みたいな遊びを、漫画家同士でやってる感じですね。

 

しかし映画版『バクマン。』は原作よりも単純明快な作りになっております。映画の尺の問題もあると思いますが、それでも原作ファンとしては「こいついないの?」みたいなレベルでキャラもエピソードも削られているのです。

 

サイコーと亜豆の恋愛模様、そしてシュージン。で、連載作家の同期である福田や仲井さん、平丸(たぶん一番面白い)。あとは欠かせない存在として新妻エイジ、そして編集部と。登場キャラだけ見ても、かなり絞っています。

 

更にいえば、サイコーと亜豆の別れまでもが描かれるわけです。ポジティブな演出のなかでの別れということで、絶望的な印象こそ与えはしないものの、原作とはここが大きく異なるところなのではないでしょうか。あくまでポジティブな、一時的な別れとして描かれます。

 

また、漫画を描く描写もリアルなところはリアル。ペン入れの音ですとか原稿へのベタ・トーンの指示とか、ちょいちょい挟まれるそういうネタは「うんうん」って感じです。しかし、評判を見ると「リアリティがない」といった批判もちらほらあるようです。まぁアシスタントも雇わずに高校生やりながら週刊連載してましたからね。それも描き溜めもなしで、ミスったら速攻で落ちるという。

 

そんなこんなで原作とだいぶ違う感じの映画化になっています。映画版の『バクマン。』は、言ってしまえばかなりシンプルなつくりになっていることがお分かりいただけたでしょうか。

 

なぜこういう改変をしたかと考えれば、それはやっぱり描きたいことを絞ったからだと言えるでしょう。

 

だって、「漫画を描くことに特化した映画」を作るならば、いくらでも詰めようはあるじゃないですか。それでも、リアリティを削ってまでも、劇中でサイコーとシュージンはたった二人で週刊連載をしたわけですし、ラストでは連載作家が集まって全員で原稿を仕上げたわけです。

 

さらに言えば、新妻エイジはかなり悪役っぽい描かれ方になっています。原作ファンからすれば、「あの朴訥な新妻くんはそんな皮肉言わないもん!」つってプンスカするとこなんでしょうけども、そういう役回りなんです。個人的にベストなシーンは、新妻エイジがサイコーの原稿にペンを入れ始めたとこで、サイコーが涙を流すシーン。あれはすげーな、と思いました。

 

そこまでの原作改変をして絞ったテーマとは、『友情・努力・勝利』だったのだと思います。原作バクマンが、かなり色んな要素が上乗せされた作品であるがゆえに、しっかり読まないと見えてこなかったテーマを、映画版ではかなりわかりやすくしたのです。

 

『友情』を描いたからこそ、福田組メンバー全員でのありえない共同作業があったし、そのホモソーシャル世界に亜豆はいらないのです。ワイの恋人は漫画や、ということなのです。

 

正直、ちょっと後半だるいのですが、先述した新妻エイジ仕事場乗り込みシーンにおけるサイコーの涙がすげー良かったので、やっぱ面白かったんじゃねーかなと今は思っております。とにかく、社会的に終わってそうな男たちが、恋人はマンガなんやで! と言わんばかりに漫画に狂って邁進していくサマはかなり良いです。大好きです。

 

みんなも漫画描くために徹夜ばっかしてると、いつかサイコーみたいに血尿出すから気をつけてくださいね。

 

 

追記

原作との相違点で、面白いなーと思ったのは主人公二人です。シュージンはすげー友達になりたい、気のいい凡人みたいなキャラになっています。原作みたいなちょっと癪に障る秀才キャラというよりは、映画でもちょっとだけ出てきた『ダイの大冒険』でのポップを彷彿とさせる良い奴感。それが映画版シュージンです。

 

シュージンがそうなっているのも、サイコーを際立たせるためでしょう。映画版サイコーは、序盤こそ「ただ絵の上手い亜豆基地外」なんですが、漫画に没入し、新妻エイジに対する憎悪とも呼べる感情を育てていった結果、わりと新妻エイジに匹敵するレベルの漫画サイコになっている印象を受けました。

 

最近僕は、「主人公って頭おかしいほど面白い」理論を考えているのですが、その辺もけっこうドンピシャでうれしかったです。

 

 

どうしても

しかし悲しいかな、僕のなかでの漫画家漫画ベストは『G戦場ヘヴンズドア』に他ならないのです。

 

映画『バクマン。』大詰めの共同作業シーンも、そのきっかけとなるサイコーのダウンも、僕にとっては『G戦』と比較してしまう場面となってしまう。

 

先述しましたように、映画『バクマン』はホモソーシャル的な友情に超フォーカスしてはいるので、単純な比較にはならないのですが、どうしても、ってとこではあります。

 

まぁとりあえずG戦読んでくれ。全3巻。

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