ドレスコーズの名盤『平凡』は時限爆弾か、あるいは。
ドレスコーズの2017年作品・『平凡』の内容がそりゃもう凄いので聴いてくれってだけの記事です。もう聴いたよって人や、ガッチリした批評を読みたい方向けの記事ではないです。
『平凡』と対峙したドレスコーズはどうなったのか。
作品全体として、管楽器がフューチャーされたりですとかダンサブルなリズムの強調がなされていたりと、これまでのドレスコーズからは変化した面を感じられる作品です。
ちなみに個人的には、とても毒のないJPOP的作品に仕上げて『平凡』と称してきたら面白いな、と思っていたのですが予想ははずれました。そりゃそうっすね。
すこしドレスコーズの変化を振り返ってみましょう。
前作のドレスコーズはこんな感じ。『オーディション』収録です。
前々作はこんな感じ。こちらは『Hippies E.P.』収録。
そしてこちらが今作『平凡』のリード的楽曲です。
今作の感触としては、Hippies E.P.(志摩遼平ソロ状態になる直前)に少し近いような気もします。
CINRAの『平凡』インタビューによりますと、Hippiesで行った志摩遼平による「自分殺し」が今作『平凡』で完成したのだといいます。
「自分を殺す」=私小説的表現を捨てた作品である今作が持っている空気は、どことなく坂本慎太郎のソロ作品にも近いです。(ちなみに今回のドレスコーズも坂本慎太郎ソロも、パーカッションがけっこう印象的で面白いです。)
Hippies E.P.のインタビューでも坂本慎太郎について言及がありますし、多少目くばせがあったのかと思われますね。
『平凡』は結局どんな作品なのか?
めちゃくちゃ平たく言えばファンクを手に入れた志摩遼平が、志摩遼平的表現を出来るだけ排して作り上げた作品である、というのが妥当なのかもしれませんが、何よりも面白いのはこのアルバム、聞けば聞くほど深い沼のように取り込まれていってしまうことです。
大多数が志摩さんに持っているイメージとしての、非常にキャッチーな側面は今作でも健在です。しかし、それ以上に強烈なリズム・ホーンセクション・コーラスなど色々なパートの音楽的テンションがものすごい。ご本人的には不本意かもしれませんが、初期ドレスコーズが持っていた何らかの「ヤバさ」みたいなものが再び顔を出してきたような印象です。得体のしれなさ、といいますか。
ものすごく踊れるし、ものすごい緊張感で演奏が進むのですが、その合間を縫うように虚無感満載の歌詞が飛び出してくるわ、アートワークは明らかに共産主義テイストだし(インタビューだと製作前にヒトラーを読んだとかの話も出てました)、色々な意味での切れ味と旨みが凝縮されています。マリーズの頃から危ないモチーフをいろいろと採用している人ですが、今回も強烈です。
録音が2週間だった、というのも一役買っているのだと思います。(こちらの動画より)
おわりに:『平凡』は時限爆弾か、それとも。
僕はこのアルバムは名盤だと思います。名盤と呼ばれて然るべきメッセージというか、熱量を秘めている。クラシック確定と言っても過言ではない。
『平凡』が語っているメッセージが予言なのか、それとも今まさにどっかで起きている事実なのか、もしくはもう手遅れなのか、というのは僕には考えが及びません。そのぐらい、全容を把握することが難しいアルバムです。
とりあえず体感してほしいアルバムです。
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